小児がん
はじめに
小児がんの放射線治療は手術や薬物療法との併用で治療されることが多く、脳腫瘍では髄芽腫、上衣腫、頭蓋内胚腫やAT/RTが主な腫瘍で、脳腫瘍以外では神経芽腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫などが適応になります。
陽子線治療の適応
陽子線治療は通常のX線治療よりも放射線の当たる領域を少なくすることができます。年余にわたって診ていく必要のある小児がんでは合併症のリスクを低減できる可能性が高く非常に有効な治療と考えられています。限局性の固形腫瘍が保険適応になっています。
陽子線治療の方法
代表的な疾患である髄芽腫を例に説明します。髄芽腫の治療は手術をまず行い、その後に薬物療法と陽子線治療が行われます。この疾患は脳脊髄腔を介して播種する可能性が高いため、まず全脳全脊髄照射が行われます。照射範囲は脳と全身の脊髄腔(背骨の中の神経が通っている部分)になります。その後でもともと病変のあった部位や残存病変に局所的な照射が行われることが多いです。通常、23.4Gy(RBE)/13回の全脳全脊髄照射と27Gy(RBE)/15回の局所照射が行われます。
当センターの治療方法の特長
●薬物療法との併用
小児がんの治療では薬物療法を併用するため入院治療となることが多いです。当センターは兵庫県立こども病院と廊下でつながって行き来できるようになっています。薬物療法との併用するお子さんも安心して治療することができます。
●スキャニング照射による全脳全脊髄陽子線治療
スキャニング照射による全脳全脊髄陽子線治療を行っています。全脳全脊髄陽子線治療は照射範囲が広いため、複数の照射範囲をつなげることになります。ビームは扇状に広がっていきますので、照射範囲をつなげる部位では、照射口に近い側は少し隙間でできて遠い側は重なりができます。従来のブロードビーム照射は照射範囲に一定の強さの陽子線を照射しますので、照射口に近い側はどうしても少し低線量になり、遠い側は高線量になります。これをできるだけ過不足が少なくなるようにミリ単位で微調整を繰り返して治療計画を作ります。スキャニング照射では、1点ずつエネルギーを変えて照射できます。コンピュータを使って適切なエネルギーの勾配をつけることで、最終的に均一な線量にすることが比較的簡単にできます。この技術により、脳脊髄に均一に照射することができます。
下図はスキャニングによる全脳全脊髄照射の線量分布とブロードビーム照射との比較のイメージ図