骨軟部腫瘍
はじめに
骨軟部腫瘍とは、骨(骨・軟骨など)や軟部(筋肉・脂肪・血管・神経など)にできる腫瘍のことです。色々なタイプ(組織型)の腫瘍ができますが、発生母地ごとに良性・中間悪性・悪性に分類され(組織グレード)、悪性のものおよび中間悪性の一部は肉腫と呼ばれます。
治療法としては、まずは手術を検討しますが、難しい場合は放射線治療や薬物療法を行います。放射線治療や薬物療法がよく効く組織型もありますが(横紋筋肉腫やユーイング肉腫など)、大部分の組織型にはあまり効きません。手術ができたとしても取り切れなかった場合は放射線治療を追加します(術後照射と言います)。
陽子線治療の適応
●切除非適応(切除が難しい、切除したが取り切れなかった)である
●悪性である(中間悪性は症例ごとに検討が必要)
上記2点を満たす場合、陽子線治療の適応となります。
なお、骨軟部腫瘍でもいわゆるがん(肺がん、胃がん、大腸がんなど)の転移は適応となりません。
骨軟部腫瘍に対する陽子線治療はすべて保険診療になります。
陽子線治療の方法
部位・組織型にかかわらず、ほとんどの場合、70.4Gy(RBE)/32回で治療します(術後照射も同様です)。
薬物療法を併用する場合、神戸低侵襲がん医療センターで薬物療法を行いながら陽子線治療を行います。
当センターの治療方法の特長
●スペーサー留置
腹部・骨盤部の腫瘍で胃や腸といった消化管が近い場合、十分な線量の照射が難しくなりますが、スペーサーといわれる医療材料を外科的に腫瘍と消化管の間に入れることで(スペーサー留置術)、十分な線量を照射することができるようになります。当センターでは世界一の症例数を誇る神戸大学医学部附属病院肝胆膵外科と連携しており、高度な治療が可能です。なお、スペーサー、留置術とも保険適用となっています。
下にスペーサー(ネスキープ®)の写真と画像を示します。黄色で囲われたスペーサーは照射終了時には照射開始時とほとんど変わりませんが、終了5ヶ月後では吸収され、消失しています。なお、腫瘍の大きさもほとんど変わっていませんが、骨軟部腫瘍はゆっくりと縮小するものが多く、この腫瘍もこの後ゆっくりと縮小しました。
●スキャニング照射
重要な臓器が密集している頭蓋底の腫瘍に特に有用と言われているスキャニング照射が使えますので、きめ細かな治療が可能です。